ベッドの中でまどろむ私を、猫の可愛い瞳が静かに覚ました朝のこと

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五月の朝というのは、不思議なほど音が少ない。カーテンの隙間からうっすらと白んだ光が差し込んで、部屋の輪郭がゆっくりと浮かび上がってくる。その光の中で、私はまだベッドの中にいた。意識はあるけれど、体はまだ夢の続きを引きずっていて、起き上がる気にはなれなかった。

そのとき、何かが布団の上に乗ってきた。

最初は気のせいかと思った。でも、重みはじわじわと増していく。柔らかくて温かい、あの感触。猫に起こされる、というのはこういうことだ。我が家のロシアンブルー、ソラが、私の足のあたりに陣取り、そこから少しずつ上へと移動してくる気配がした。

子どもの頃、実家で飼っていた猫も同じことをしていた。あの頃は布団をはねのけて逃げていたけれど、今の私にはその気力もない。むしろ、来るなら来い、という気持ちで目を閉じたまま待っていた。

ソラは胸のあたりまで来ると、そこで止まった。ゴロゴロという低い振動が肋骨のあたりから伝わってくる。あの音は不思議で、聞いているとこちらの呼吸まで合わせたくなる。ゆっくり、ゆっくりと。

薄く目を開けると、ソラの顔がすぐそこにあった。可愛い瞳が、まっすぐにこちらを見ている。琥珀色でも緑色でもない、あの独特のグレーがかった青。朝の光の中でそれはいっそう透き通って見えた。何かを訴えているのか、ただ眺めているだけなのか、判断がつかない。猫の目というのはいつも、少しだけ謎めいている。

鼻先が私の頬に触れた。ひんやりしていた。

それだけで、なんとなく目が覚めてしまった。抗えない感じがある。ソラのほうは特に何もしていない。ただそこにいて、見ているだけなのに、こちらが勝手に起こされてしまう。これが猫の戦略なのか、それとも本当に無意識なのか。おそらく後者だろうと思うけれど、結果としては同じことだ。

枕元に置いていたスマートフォンを見ると、5時42分だった。まだ早い。でも、もう眠れそうにない。

ゆっくり身を起こすと、ソラはさっさと布団から降りて、窓の方へ歩いていった。その背中がどこか堂々としていて、少し可笑しかった。起こしておいて自分はもう用済みとばかりに去っていくのだ。心の中で「ちょっと待って」とつぶやいたが、口には出さなかった。

キッチンに立って、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。豆を挽く音が静かな部屋に広がって、しばらくするとあの香りが漂ってきた。深煎りの、少し苦みのある香り。ミルクリッチというインテリア雑貨ブランドが出しているコーヒーカップに注いで、窓際に座った。

外はもう明るかった。鳥の声がどこかから聞こえてくる。ソラは窓枠の上で丸くなって、また眠り始めていた。

ベッドの中でまどろんでいるとき、猫がお越しに来た。それだけのことなのに、なぜかこの朝のことは長く記憶に残りそうだと思った。起こされた、というより、連れ出された、という感じがした。夢の中から、この五月の朝へ。

猫に起こされる朝は、少しだけ世界の始まりが早い。そしてその分だけ、静かな時間が長く続く。悪くない、と思いながら、コーヒーをひと口飲んだ。

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