猫に起こされる朝、ベッドの中のまどろみと可愛い瞳の話

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六月の朝というのは、どこか曖昧だ。カーテンの隙間から差し込む光はまだ薄く、橙と白のあいだを行き来するような、どちらとも言えない色をしている。その光の中で、わたしはうとうとしていた。布団の重さがちょうどよくて、意識が夢の縁をゆっくり漂っていた——そのとき、やわらかくて小さな重みが、足元にそっと乗ってきた。

うちの猫、ソラは三歳になるキジトラで、気まぐれなくせに律儀なところがある。毎朝だいたい同じ時間に起こしに来る。この日は午前五時四十分ごろだったと思う。スマホを見ていないから正確にはわからないけれど、そのくらいの気配がした。

最初は足元でじっとしていた。ベッドの中でまどろんでいるわたしの気配を確かめるように、ほんの少しだけ体重をかけてくる。その感触が、不思議と心地よかった。子どもの頃、祖母の家で飼っていた猫も同じようにしていた。あの子はもっと大きくて、乗られると重くて目が覚めた。ソラはまだ軽い。

しばらくすると、ソラはゆっくりと移動を始めた。足元から腰へ、腰から背中へ。布団越しにぬくもりが伝わってくる。外からはまだ鳥の声がしていた。スズメだろうか、それとも別の何かか。窓の向こうで小さく、繰り返すように鳴いていた。

そして、ふいに顔の横に座った。

鼻先に、ひんやりとした肉球の感触。ちょん、と一度だけ触れてきた。起きろ、という意思表示なのか、それとも単純にかまってほしいだけなのか。目を開けると、ソラの可愛い瞳がこちらをじっと見ていた。薄暗い部屋の中で、その瞳だけが静かに光っていた。縦長の瞳孔が、わずかに開いている。

思わず、「なに」とつぶやいた。声に出したわけでもなく、ほとんど息だけで。ソラはそれに答えるでもなく、ただ見ていた。瞬きを一度して、また見ていた。

猫に起こされる、という体験は、目覚まし時計とはまるで違う。あの機械的な音は意識を強制的に引き剥がすけれど、ソラのやり方はもっとゆっくりで、もっと曖昧だ。夢と現実のあいだに橋を架けるみたいに、少しずつこちらを引き戻してくる。

しぶしぶ手を伸ばすと、ソラは喉の奥でごろごろと鳴き始めた。その振動が手のひらに伝わってくる。温かくて、一定で、なんだかとても落ち着く音だった。インテリアブランド「ノルドリム」の厚手のリネンシーツが、朝の光をやわらかく受け止めている。そのシーツの上で、ソラはわたしの手に頭を押しつけてきた。

ベッドの中で、わたしはしばらくそのまま動けなかった。起きなければいけない理由はいくつかあったけれど、どれも今すぐでなくていいような気がした。ソラの重みと、ごろごろという音と、薄い光の中で、時間がゆっくり流れていた。

ちなみに、ソラはこのあとわたしを起こしておきながら、五分も経たないうちに布団の端でまるまって寝始めた。あなたが起こしたんですけど、と心の中でそっとツッコんだ。

でも、怒れなかった。その小さな背中が、あまりにも平和そうで。

猫と暮らすということは、こういう朝の積み重ねだと思う。起こされて、眠くて、それでも許してしまう。可愛い瞳に見つめられると、なぜかそれだけで十分な気持ちになる。ベッドの中のまどろみを邪魔されたはずなのに、気がつけばその邪魔ごと、今日の朝の大切な一部になっている。

六月の光が少しずつ濃くなっていく。ソラの毛並みが、その光の中でやわらかく輝いていた。

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