本を読む私の膝の上に、愛おしい猫がいる。邪魔をする猫との、静かな午後の話

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四月の終わりの午後、窓から差し込む光がちょうど斜めになる時間帯がある。夕方でもなく、昼でもない、あの曖昧な黄金色の時間。私はソファに深く沈み込んで、ずっと積んだままだった小説を開いていた。タイトルは伏せるけれど、ようやく三章まで読み進めたところだった。

そのとき、彼女がやってきた。

うちの猫、ムギ。三歳になる薄茶色のキジトラで、名前の通りどこか穀物みたいな丸みがある。ふだんは窓際で日向ぼっこをしているか、押し入れの中で眠っているかのどちらかで、私が何かをしていても気にしないふりをしている。そう、「ふり」をしているのだ。

読書する私の気配を察知したのか、ムギはそろりそろりとソファに乗ってきた。最初は膝の横。次に膝の上。そして、開いた本のちょうど真ん中に、前足をのせた。ページをめくろうとした瞬間、ぺたりと手を置いてくる。まだ読んでいる、と言いたいのか、それとも「もう十分でしょ」と言いたいのか。どちらにしても、三章の続きは当分おあずけになった。

こういう邪魔をする猫の行動には、実はちゃんとした理由がある。飼い主が何かに集中して静かにしていると、猫は「暇そうにしている」と勘違いして、かまってほしいサインを出すのだという。本の上に乗るのも、視界をふさぐのも、すべては「こっちを見て」という純粋な訴えなのだ。悪意など、どこにもない。

子どものころ、実家で飼っていた猫もそうだった。母が台所で料理をしていると決して来ないのに、母がソファで雑誌を読み始めた途端に膝の上に乗ってきた。あの猫も、忙しいときと暇なときの区別が独自の基準でついていたのだろう。人間の都合など、おかまいなしに。

ムギは今、本の上で目を細めている。窓から差し込む光がちょうど彼女の背中に当たって、薄茶色の毛並みが金色に透けて見える。鼻をくんくんと動かしながら、私の手のにおいをかいでいる。さっきまで触っていたページのにおいが気になるのかもしれない。インクと紙の、少し乾いた香り。それから、私の指先にうっすら残ったコーヒーの匂い。今日の午後に淹れた、架空のブレンドではなく本物の、少し濃すぎた一杯の残り香だ。

ムギが頭を私の手首にすりつけてくる。ごろごろという振動が、手のひらを通じて伝わってくる。温かい。猫の体温というのは、人間よりも少し高くて、ちょうど湯たんぽみたいな温度をしている。冬ならもっとありがたいのだけれど、四月のこの時期でも、膝の上の重さと温かさは悪くない。

読書する私は、ここで完全に降参した。

本にはしおりを挟んで、ムギの背中に手を乗せる。するとさらに大きなごろごろが返ってくる。まるで「やっとわかったか」とでも言うように。愛おしい猫というのは、こういう生き物だ。自分のペースで近づいてきて、自分のタイミングで去っていく。それなのに、去られると少し寂しい。

ちなみに今日のムギ、一度だけ盛大にくしゃみをして、開いたページに鼻水をつけた。本人はまったく気にしていない様子で、そのままごろごろしている。私の心の中で小さなツッコミが走ったが、まあ、これも思い出の一ページということにしておこう。

邪魔をする猫と暮らすということは、自分の時間が思い通りにならないということだ。でも、思い通りにならない時間の中に、思いがけない柔らかさがある。ムギが膝の上で目を閉じていく様子を見ていると、今日読めなかった三章より、この午後の方がずっと大事な気がしてくる。

本は、また明日読めばいい。

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