
うちの猫、もう3匹目なんだけど。
洗面所で猫を洗うときの音って、本当にすごい。シャワーの音、猫の鳴き声、それから自分の「ごめんごめん」っていう謝罪の声が混ざって、まるで小さなライブ会場みたいになる。近所の人に聞こえてないか心配になるレベルで、実際一度だけ「大丈夫ですか」ってインターホン鳴らされたことがある。大丈夫じゃないけど、猫洗ってるだけなんで…って言い訳したら、微妙な顔されたっけ。
最初に飼ってた猫は、水に濡れることをそこまで嫌がらなかった。おとなしく洗われて、ドライヤーの時だけちょっと暴れる程度。あれが普通だと思ってたから、2匹目を迎えたときの衝撃といったらなかった。洗面台に置いた瞬間、まるでアクション映画のワンシーンみたいに飛び跳ねて、壁を蹴って、私の肩に爪を立てて登ってきた。血が出た。猫を洗うのに流血って、そんなことある?
今飼ってる子は、その中間くらいの反応をする。嫌がるけど諦めも早いタイプ。濡れた毛がぺたんこになって、普段の半分くらいの大きさに見えるのが毎回おかしくて、思わず笑ってしまう。本人(本猫?)はすごく不機嫌そうな顔してるんだけど、その小ささがまた可愛くて。
そういえば前に、猫用のシャンプーを切らしてて、人間用のを薄めて使ったことがあるんだけど、あれは失敗だった。別に猫の体調が悪くなったとかじゃなくて、香りの問題。ラベンダーの香りがする猫って、なんか違和感しかない。猫は猫の匂いがするべきだと思うんだよね。その後しばらく、本人も自分の匂いに戸惑ってたみたいで、自分の体を嗅いでは首を傾げてた。
きれいにしようと思って洗ってるんだけど、本当にこれ必要なのかなって疑問に思うときもある。猫って基本的に自分で毛づくろいするし、そもそも完全室内飼いだからそんなに汚れない。でも動物病院の先生には「月に一回は洗ってあげて」って言われてるから、律儀に守ってる。守ってるっていうか、カレンダーに「猫風呂」って書き込んでるくらいには真面目にやってる。我ながらちょっと几帳面すぎるかもしれない。
洗ってる最中、猫の耳に水が入らないように気をつけるのが一番神経使う。片手で耳を押さえながら、もう片方の手でシャワーを操作して、さらに暴れる猫を固定するって、腕が3本くらい欲しくなる。昔、友達に「猫洗うの手伝って」って頼んだら、「無理、絶対引っかかれる」って秒で断られた。正しい判断だと思う。
水の温度も難しい。人間がちょうどいいと思う温度だと猫には熱すぎるらしくて、最初の頃は何度も失敗した。今はもうぬるま湯どころか、ほぼ水に近い温度で洗ってる。真冬とかこっちの手が冷たくて辛いんだけど、猫の快適さには代えられない。飼い主の鏡だと自分で思う。思いたい。
シャンプーを流し終わって、タオルドライに入る瞬間が一番好きかもしれない。びしょ濡れの猫をバスタオルでくるむと、急に大人しくなる。諦めたのか、温かくて気持ちいいのか。そのままぎゅっと抱きしめると、濡れた毛の独特な匂いがする。猫の匂いと水の匂いと、ほんの少しだけシャンプーの香り。この瞬間だけは、洗ってよかったなって思える。
ドライヤーで乾かすときは、また戦いが始まる。音が怖いのか風が嫌なのか、とにかく逃げようとする。でも中途半端に濡れたままだと風邪ひくかもしれないし、ここは踏ん張りどころ。弱風にして、できるだけ離して当てて、それでも嫌がるから結局タオルでゴシゴシ拭いて終わることも多い。完璧に乾かせた試しがない。
全部終わって猫を解放すると、すごい勢いでリビングに走っていって、ソファの上で毛づくろいを始める。「お前がやった仕事は気に入らない」って言われてる気がして、ちょっと傷つく。せっかくきれいにしたのに。
でもまあ、来月もまた洗うんだろうな。カレンダーに書いてあるし。

コメント