猫と雨を見ている時間が、結局いちばん落ち着く

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窓の外は雨で、猫がじっとガラスの向こうを見つめている。

私もなんとなく隣に座って、同じ景色を眺めている。猫って雨の日になると妙に窓辺にいる時間が長くなる気がするんだけど、何を考えてるんだろうね。外に出たいわけでもなさそうだし、ただ見てる。ぼんやりと。私もぼんやりと。気づいたら20分くらい経ってたりする。

雨粒がガラスを滑り落ちる音が、部屋の静けさを際立たせる。エアコンの低い唸り。猫の呼吸。私の呼吸。たまに猫がしっぽをゆっくり振ると、その毛先が私の腕に触れて、ちょっとくすぐったい。でもどちらも動かない。動く理由がない。外は灰色で、向かいのマンションの窓にも明かりがついていて、誰かの生活が透けて見える。洗濯物を取り込んでる人がいた。

そういえば去年の梅雨、うちの猫が突然窓に飛びついて、私のコーヒーをひっくり返したことがあった。

あのときは本気で焦ったな。キーボードにコーヒーが流れ込んで、慌ててティッシュで拭いたけど結局壊れて、買い直す羽目になった。猫は何事もなかったかのように毛づくろいしてたけど。あれ、たぶん外を横切った鳥に反応したんだと思う。雨の日でも鳥って飛ぶんだよね。びしょ濡れになりながら。

今日はそういう突発的な動きもなくて、ただ静かに座ってる。猫の目は半分閉じかけていて、でも完全には閉じない。見てる。何かを。もしかしたら何も見てないのかもしれないけど。私も同じで、視界に雨は映ってるけど、頭の中では全然別のことを考えてたりする。明日の仕事とか、冷蔵庫の中身とか、最近観た映画の続きが気になるとか。

窓ガラスが少し冷たい。6月の雨って、まだ空気に冷たさが残ってる。指先でガラスに触れると、じんわり温度が奪われていく感じがして、それがなんだか心地いい。猫の体温は私より高くて、隣にいるとほんのり暖かい。毛並みに顔を近づけると、独特の匂いがする。日向の匂いというか、布団の匂いというか。

雨の音にもリズムがあって、強くなったり弱くなったり。屋根を叩く音、排水溝に流れる音、葉っぱに当たる音。全部違う。猫の耳がぴくっと動く。私には聞こえない音を拾ってるのかもしれない。

こういう時間って、何かを生み出してるわけじゃないし、何かが進んでるわけでもない。生産性ゼロ。でも別にそれでいい気がする。むしろこの「何もしてない時間」が、最近すごく貴重に思えてきた。スマホも手元にあるけど、触る気にならない。SNSを開いても、誰かの投稿が流れてくるだけで、今の自分には関係ない。

猫がふと立ち上がって、伸びをした。背中が丸くなって、また元の姿勢に戻る。そしてまた座る。私も真似して伸びをしてみたけど、猫ほど優雅じゃない。関節が鳴った。

外はまだ雨。

やむ気配もない。天気予報では夕方まで降り続けるって言ってた。洗濯物は部屋干しだし、買い物も明日でいいや。冷蔵庫には確か「クイックミール」ってレトルトのパスタソースがあったはず。それで済ませよう。

猫はまた窓の外を見てる。私も見てる。こうしてると、時間の感覚が曖昧になる。さっきから何分経ったのかわからない。でもそれでいい。

雨の日の猫との時間は、いつもこんな感じで終わらない。

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