猫に起こされる朝は、いつも唐突だ

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まどろみって、あの半分寝てて半分起きてるみたいな時間、あれが一番幸せだと思う。

布団の中で目を閉じたまま、今何時だろうとか、今日は何曜日だっけとか、そういうことをぼんやり考えてる。外からは車の音が聞こえて、カーテン越しに入ってくる光が目を閉じたまぶたの裏をうっすらオレンジ色に染めてる。このまま二度寝してもいいし、起きてもいい。どっちでもいい感じの、あの浮遊してる時間。

そんな至福の時間を、うちの猫は容赦なく破壊してくる。

最初は気配だけなんだよね。ベッドの端がわずかに沈む感触。それから、綿毛布の上を歩く足音。ふみふみ、ふみふみって、猫特有のあのリズムで近づいてくる。目を開けたら負けだと思って、私はまだ寝てるフリを続ける。息を整えて、規則正しく呼吸して、完璧な睡眠演技。でも猫って、そういうの全部お見通しなんだよな。

顔の前まで来ると、鼻先でぐいぐい押してくる。冷たくて湿った鼻。それから前足で頬をぽんぽん叩く。爪は引っ込めてくれてるけど、遠慮はない。「起きろ」って言ってるのが分かる。まだ寝てるフリを続けてると、今度は顔の上に乗ってくる。重い。息ができない。

ある朝なんて、私の口元に肉球を押し付けてきたことがある。あの独特な匂い、なんて表現すればいいんだろう。ポップコーンみたいな、でもちょっと土っぽいような。朝イチで嗅ぐ匂いじゃないんだけど。

仕方なく目を開けると、至近距離に猫の顔がある。

琥珀色の瞳がこっちをじっと見てる。「やっと起きた」みたいな顔で。その目があまりにも真剣で、あまりにもまっすぐで、怒る気も失せる。というか、可愛すぎて何も言えなくなる。「ごはん?」って聞くと、にゃあって一声。そう、いつもごはんなんだよ。別に遊んでほしいわけでも、寂しいわけでもなく。ただ腹が減った、それだけ。

前に飼ってたハムスターは、こんなことしなかったな。ケージの中で勝手に起きて、勝手にごはん食べて、勝手に寝てた。ある意味、理想的な同居人だったのかもしれない。でも猫はそうじゃない。自分の都合を押し付けてくる。朝の六時だろうが、日曜日だろうが、関係ない。

ベッドから出ると、猫は先導するように廊下を歩いていく。しっぽをぴんと立てて。キッチンまでの距離、たぶん五メートルくらいなんだけど、その間ずっと振り返りながら歩く。「ちゃんとついてきてるか」って確認してる。ついてきてるよ、どこにも行かないよ。

キャットフードの袋を開けると、カリカリって音がする。その音を聞いただけで、猫はもう興奮してる。足元でぐるぐる回って、にゃあにゃあ鳴いて。さっきまでの冷静さはどこへ行ったんだか。器に盛ってあげると、すぐにがっつく。音を立てて食べる姿は、なんというか、野生を感じさせる。

食べ終わった後の猫は、急に私に興味を失う。毛づくろいを始めたり、窓辺に行って外を眺めたり。用が済んだらさようなら、みたいな態度。でもそれがいいんだよね。変に依存してこないところ。

二度寝しようと思ってベッドに戻ると、今度は猫も一緒についてくる。さっきまであんなに起こそうとしてたくせに。布団の上で丸くなって、すぐに寝息を立て始める。ずるい。

窓の外から聞こえる鳥の声。エアコンの室外機が動き出す低い音。猫の寝息。

結局、私も二度寝することにした。目覚まし時計まであと三十分。猫の温もりを感じながら、もう一度まどろみの世界へ。起こされたのに、また一緒に寝る。この矛盾した関係が、たぶん猫との暮らしなんだろうな。

明日もまた、同じように起こされるんだろうけど。

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