本を読もうとすると必ず邪魾をする猫との、終わらない攻防戦

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読書って、一人の時間を楽しむ行為のはずなんだけど。

うちで本を開くと、必ず現れる。どこに隠れていたのかと思うくらい、絶妙なタイミングで。ページをめくる音が聞こえた瞬間、廊下の奥からトコトコと足音がして、気づけば膝の上に乗っている。いや、乗っているだけならまだいい。問題は、その後だ。まず顔を本とわたしの間にねじ込んでくる。ちょうど読んでいる行の真ん中あたりに、ふわふわの頭が割り込んでくる感じ。視界が突然、茶トラの毛並みで埋め尽くされる。

「ちょっと待って、今いいところなんだけど」って声をかけても、聞こえてないふりをする。

むしろ本の上に前足を乗せて、ぐいぐい押してくる。ページが折れる。しおりが飛ぶ。そんなの関係ない、という顔でこっちを見上げてくる。目が合うと「ニャー」って一声。これが合図だ。「遊んで」じゃなくて、「構え」っていう命令。

去年の秋、新しく買った小説があった。発売日に書店で手に入れて、帰りの電車の中でずっとワクワクしてた。表紙の手触りとか、ページをめくる音とか、そういうの全部含めて楽しみにしてた。家に帰って、コーヒーを淹れて、ソファに座って、さあ読むぞって本を開いた瞬間。膝の上にドスンと着地した。4キロの重み。そして本の上に寝そべった。完全に覆い隠すように。

あのときは笑うしかなかったけど。

本を動かすと、一緒についてくる。本を高く持ち上げても、立ち上がって前足を伸ばしてくる。ジャンプして本を叩き落とそうとする。もはや妨害工作のプロだ。諦めてスマホで電子書籍を読もうとすると、今度はスマホの画面を肉球で触ってくる。ページが勝手に進む。しかも購入ボタンを押しそうになる。危ない危ない。

なんでこんなに読書を邪魔するのか、最初は理解できなかった。でも観察していると、わかってきた。本を読んでいるとき、わたしの視線は本に向いている。手も本を持っている。つまり、猫に向いていない。それが気に入らないらしい。自分以外のものに夢中になっているのが、許せない。

ある日、試しに猫を撫でながら本を読んでみた。片手で本を持って、もう片方の手で頭を撫でる。最初はうまくいった。ゴロゴロ喉を鳴らして、満足そうにしていた。けれど5分もすると、撫でている手を噛んでくる。甘噛みだけど、「ちゃんと撫でろ」っていう催促。集中して読めるわけがない。読んでいた行を見失う。また最初から読み直し。そしてまた邪魔が入る。無限ループ。

友達に話したら「それ、愛されてるってことじゃん」って言われた。

まあ、そうなのかもしれない。けれど、読書家としては切実な問題だ。積読が増える一方。新刊を買っても読み終わるのに何週間もかかる。読書メーターのグラフが悲しいことになっている。目標冊数に全然届かない。

夜中、猫が寝静まった後にこっそり読むという手もある。実際、試したことがある。深夜2時、リビングの照明を落として、小さなスタンドライトだけつけて、そっと本を開いた。静かだった。ページをめくる音だけが響く。これは快適だ、と思った瞬間。暗闇から光る二つの目。いた。じっとこっちを見ていた。そしてゆっくりと近づいてきて、また膝の上に乗った。

もう笑うしかない。

最近は諦めて、猫が寝ているときを狙うようにしている。昼間、日の当たる窓辺で丸くなっているとき。そのタイミングを逃さず、別の部屋でこっそり読む。でも気配を察知されることもある。本当に、どうやって分かるんだろう。物音を立てていないのに、ふと気づくと後ろに立っている。そして「ニャー」。

考えてみれば、猫を飼う前は好きなときに好きなだけ本を読めた。週末なんて、朝から晩まで読書三昧だった。カフェに行って、何時間も粘ることもあった。「ブックス&ブリュー」っていう、本と珈琲の店が好きだった。あそこは静かで、誰にも邪魔されなくて、最高の読書空間だった。

今はそんな自由はない。けれど、本を読もうとするたびに膝に乗ってくる温かさとか、ページの上に乗せられる肉球の感触とか、そういうのも悪くない…のかもしれない。読書の進みは遅くなったけど、別のものが増えた気がする。何が増えたのかは、うまく言葉にできないけど。

結局、今日も本は10ページしか進まなかった。そして膝の上で猫が寝ている。起こすわけにもいかないし、このまましばらく動けない。読みかけの本は手の届かないところにある。仕方ないから、猫の寝顔を眺めてる。

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