私の読書時間は、いつも猫との攻防戦になっています。本を開いた瞬間から始まる、愛猫モモとの小さな戦いの物語を今日もまた繰り広げることになるのです。
静かな日曜の午後、私はお気に入りの一人掛けソファに座り、待ちに待った新刊小説を開きました。表紙をめくる音に反応したのか、部屋の向こうで昼寝をしていたモモの耳がピクリと動きます。ここから、いつもの攻防が始まることを、私は既に知っているのです。
最初は何事もないかのように、モモはゆっくりと伸びをして立ち上がります。まるで偶然を装うかのように、私の方へとのそのそと歩み寄ってきます。本の内容に集中しようとする私の視界の端で、その姿が徐々に大きくなっていくのを感じます。
「今日こそは、最後まで読めますように」と心の中で祈りながら、私は必死に文字を追います。しかし、モモの作戦はすでに始まっているのです。最初は控えめに、ソファの横でくるくると回り始めます。その後、徐々にソファに近づき、やがて私の足元で転がり始めるのです。
「ちょっと、モモ」と声をかけても、彼女の動きは止まりません。むしろ、私の声を聞いたことで作戦は次の段階へと移行します。今度は私の膝に前足をかけ、本の下端を覗き込むような仕草を見せ始めます。その大きな瞳で、まっすぐに私を見つめてくるのです。
この瞬間が一番危険です。なぜなら、モモの可愛らしい表情に負けそうになるからです。しかし今日は踏ん張らなければなりません。山場に差し掛かったところなのですから。でも、モモの作戦はまだまだ続きます。
次は本の上に直接、前足を乗せてきました。私の手の上から、白い肉球が覗いています。そして最後の切り札として、本の真ん中に顔を押し付けてきたのです。もう文字が見えません。完全に読書が中断させられてしまいました。
「もう、しょうがないなぁ」と私は降参の白旗を上げます。本を閉じると、待ってましたとばかりにモモは私の膝の上に乗ってきました。グルグルと喉を鳴らしながら、満足げな表情を浮かべています。
この光景は、毎日のように繰り返されます。読書に集中したい私と、構って欲しい猫との小さな戦い。最初は困惑していた私も、今ではこれが日常の一部として受け入れています。むしろ、モモがこうして私に関心を示してくれることが、とても愛おしく感じられるようになりました。
モモが来る前は、静かに読書を楽しめていました。でも、彼女が来てからの方が、確実に生活に彩りが増えたのです。本を読むペースは確かに遅くなりましたが、その分、モモとの温かい触れ合いの時間が増えました。
時には、モモの柔らかい毛並みを撫でながら、本の内容について語りかけることもあります。もちろん、モモには物語の内容は理解できないでしょう。でも、私の声に耳を傾けているような仕草を見せるのです。そんな瞬間、この邪魔な存在が、実は私の大切な読書仲間なのかもしれないと思えてきます。
季節が変わり、窓の外の景色が移り変わっても、この光景は変わりません。時には締め切りに追われて、急いで本を読まなければならない時もあります。そんな時でも、モモは容赦なく私の読書時間に割り込んできます。でも不思議と、イライラした気持ちにはなれないのです。
むしろ、モモの存在によって、私は強制的に休憩を取ることができています。読書に没頭しすぎて、疲れていることに気づかないこともありますが、モモは私の体調を察知しているかのように、そんな時こそ執拗に邪魔をしてくるのです。
本の上に乗っかってくる姿、読書の邪魔をする仕草、すべてが愛情表現なのだと気づいた時、私はモモとの関係をより深く理解できるようになりました。彼女は単に注目を集めたいわけではなく、私と時間を共有したいのです。それは、私への深い信頼と愛情の証なのかもしれません。
今では、読書時間は私とモモの大切な絆を確認し合う時間となっています。本を開く音は、モモにとって「一緒の時間」の始まりを告げる合図となり、私にとっては愛猫との温かいふれあいのスタートを示す音となったのです。
たとえ読書の進みが遅くなっても、モモとの時間は何物にも代えがたい価値があります。彼女の存在は、私の読書生活に特別な意味を与えてくれました。読書の邪魔をする猫は、実は最高の読書のお供なのかもしれません。
これからも、私の読書時間は穏やかな猫との戦いの連続となるでしょう。でも、それは幸せな戦いです。なぜなら、その度に私たちの絆は深まっていくのですから。本を読む私と、構って欲しがる猫との温かい物語は、これからも続いていくことでしょう。
そして今日も、新しい本を手に取る私の傍らで、モモは期待に満ちた眼差しを向けています。さあ、また新しい章が始まります。私とモモの、愛おしい攻防の物語が。
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