猫を洗う日々が教えてくれた、諦めと執着のあいだ

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うちの猫、もう5匹目なんだけど。

最初の頃は「猫って水嫌いだから洗わなくていいんでしょ」って思ってた。実際、猫飼いの先輩からもそう言われてたし、ネットで調べても「基本的に不要」って書いてある。でもうちの三毛猫のタマが、ある夏の夕方に庭の泥んこに突っ込んで帰ってきた日から、私の人生は変わった。茶色い足跡が廊下に点々と続いていて、タマ本人はケロッとした顔で座ってる。あの瞬間、覚悟を決めたんだと思う。

洗面所に猫を連れ込むときの緊張感ったらない。お湯の温度は38度くらい、シャワーヘッドは一番弱い水圧に設定して、タオルは3枚用意する。準備万端のはずなのに、いざ猫の体にお湯をかけた瞬間、世界が一変する。鳴き声というか、断末魔というか、とにかくすごい音量で「ぎゃーーー!」って叫ぶわけ。近所迷惑とか考える余裕もなく、必死で猫の体を押さえつけながらシャンプーを泡立てる。爪が腕に食い込んで、血が出ることもある。それでも洗う。きれいにしようって決めたから。

昔、大学生の頃にバイトしてた喫茶店「カフェ・モンルージュ」のマスターが猫を3匹飼ってて、その人も定期的に猫を洗ってたんだよね。「猫洗いはね、格闘技だよ」ってニヤニヤしながら言ってたのを思い出す。当時は「変な人だな」くらいにしか思ってなかったけど、今ならわかる。あれは格闘技だ。

2匹目を迎えたときは、もう少し要領がよくなってた。洗う場所を洗面所からお風呂場に変えて、私も一緒に濡れる覚悟で臨んだ。Tシャツと短パンで猫を抱えて浴槽に入る。お湯を張った浴槽にゆっくり猫を沈める作戦。これが意外とうまくいって、猫も諦めたのか、最初の悲鳴のあとは妙におとなしくなった。濡れた猫の毛ってペタッとして、普段の3分の1くらいの大きさに見える。「お前、こんなに小さかったんだ」って毎回思う。

3匹、4匹と増えるたびに、洗う頻度も上がっていった。多頭飼いになると、1匹が汚れると連鎖的にみんな汚れる。誰かが吐いたものを別の猫が踏んで、それをまた別の猫が舐めて…みたいな地獄のループ。だから週に1回は誰かしら洗ってる計算になる。洗面所はもう常に湿ってるし、猫用シャンプーのボトルが3本並んでる。ドラッグストアで猫用シャンプーを買うとき、レジの人の視線が気になるようになった。「この人、どれだけ猫洗ってるんだろう」って思われてる気がして…まあ実際その通りなんだけど。

5匹目のチビは、なぜか最初から水を怖がらなかった。

シャワーをかけても暴れないし、むしろ気持ちよさそうにしてる。これには本当に驚いた。他の4匹は相変わらず大騒ぎなのに、チビだけは別世界の住人みたいに落ち着いてる。「もしかして前世で人間だったのかな」とか本気で考えたりする。チビを洗うときは、他の猫たちが遠巻きに見てるんだよね。「なんであいつだけ平気なんだ」みたいな顔で。猫にも嫉妬ってあるのかもしれない。

洗い終わった後のドライヤータイムも、これまた大変。濡れた猫を5匹分タオルドライして、ドライヤーで乾かす。ドライヤーの音も猫は嫌いだから、また暴れる。でも乾かさないと風邪ひくし、生乾きの猫って独特の匂いがするから、ここは妥協できない。秋の夜、窓を開けてドライヤーの熱風を逃がしながら、猫を膝に乗せて乾かしてると、なんか不思議な気持ちになる。こんなにぎやかで、こんなに大変で、でもこれが日常になってる。

最近は「なんで洗ってるんだっけ」って思うこともある。別に猫って自分で毛づくろいするし、本当は洗わなくてもいいのかもしれない。でももう習慣になっちゃってて、洗わないと逆に落ち着かない。きれいにしようって思うのは、私のエゴなのかもしれないけど…まあ、いいか。猫たちも洗われ慣れてきたのか、最近は諦めの早さが加速してる気がする。

来週も、また誰かを洗うんだろうな。

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