
うちの猫、洗ってる。
週に一度くらいのペースで風呂場に連れ込んでは、シャンプーして流してタオルで拭いて、という作業を繰り返している。友人に話すと大抵「猫って水嫌いじゃないの?」って顔をされるんだけど、まあ確かに最初はそうだった。初めて洗おうとした時なんて、洗面所の扉を開けた瞬間に察知されて、ベッドの下に潜り込まれて一時間くらい格闘した記憶がある。あの時の引っかき傷、まだうっすら残ってるし。
きっかけは去年の梅雨時。なんか妙に猫の毛がべたついてて、撫でると手に脂っぽさが残るようになったんだよね。調べてみたら皮脂が溜まりやすい体質の子もいるらしくて、それで「じゃあ洗おう」ってなった。最初は月一回のつもりだったのに、洗った後のふわふわ具合が気持ちよすぎて、気づいたら週一ペースになってた。完全に私の趣味。
洗う時間帯は大体夜の九時過ぎ。仕事から帰ってきて、ご飯食べて、一息ついたタイミングで「さて、やるか」って腰を上げる。風呂場の蛍光灯をつけると、ジジジって音がして薄暗かった空間が一気に白く照らされる。シャワーのお湯を38度くらいに設定して、猫用のシャンプーボトルを手に取る。ちなみにこれ、「フェリーチェ」っていうブランドのやつで、ラベンダーの香りがほんのりするタイプ。人間用のシャンプーみたいないい匂いがして、正直これ目当てで洗ってる部分もある。
で、猫を抱えて風呂場に入るわけだけど、ここからがもうにぎやか。鳴く鳴く。「ニャー」じゃなくて「ギャオオオ」みたいな、野生を思い出したかのような声で抗議してくる。でも不思議なことに、お湯をかけ始めると諦めるのか、急に静かになるんだよね。目だけはめちゃくちゃ訴えかけてくるけど。「なんでこんなことするの?」って顔で私を見上げてくる。ごめんね、きれいにしたいだけなんだ。
シャンプーを手のひらで泡立てて、背中から順番に洗っていく。首の後ろ、お腹、しっぽの付け根。指先に伝わる猫の体温が妙に高くて、いつもびっくりする。人間より二度くらい高いんだっけ? 泡まみれになった猫は、普段の三割増しくらいで小さく見える。濡れた毛がぺたんとして、「あれ、こんなに細かったっけ?」ってなる。
そういえば前に、泡を流してる最中に手が滑って猫を落としそうになったことがあって。あの時は心臓が止まるかと思った。幸い猫は風呂場の床にぺたっと着地しただけで済んだけど、その後しばらく私のこと避けられた…だけど。
流し終わったらタオルでゴシゴシ拭く。これがまた大変で、猫は全力で逃げようとするし、タオルはすぐびしょびしょになるし。三枚くらい使ってようやく八割くらい乾く感じ。ドライヤーは音を怖がるから使えなくて、あとは自然乾燥に任せるしかない。リビングに放つと、猫は猛ダッシュでソファの上に駆け上がって、そこで延々と毛づくろいを始める。「お前がやった仕事を修正してやってる」みたいな顔で。
洗い終わった後の風呂場には、猫の毛が排水溝にびっしり溜まってて、それを掃除するのもまた一仕事。でもその手間を差し引いても、洗った後の猫を抱っこした時のあのふわふわ感は病みつきになる。顔を埋めると、ラベンダーと猫本来の匂いが混ざった、なんとも言えない香りがして、幸せな気持ちになるんだよね。
最近は猫も慣れてきたのか、風呂場に連れて行く時の抵抗が弱くなってきた気がする。もしかして嫌いじゃないのかな、なんて都合よく解釈してるけど、多分それは私の願望。本当のところはわからない。わからないけど、まあいいか。来週もまた洗うと思う。


コメント