
うちには猫が三匹いる。
週末になると、私は猫たちを洗う。別に潔癖症ってわけじゃないんだけど、一度始めたら止められなくなってしまった。最初のきっかけは、長毛種の末っ子がトイレ砂を全身にまとって帰ってきた日で、あれは確か去年の梅雨時だったと思う。仕方なく洗面台で洗ったら、意外と猫が大人しくて、むしろ気持ちよさそうにしてたんだよね。それで調子に乗って「じゃあ他の子も」ってなった。
今では毎週土曜の午前中が猫洗いタイムになってる。近所のドラッグストアで買った「ペットクリーンフォーム」っていう泡タイプのシャンプーを使ってるんだけど、これがまたいい香りで。ラベンダーとカモミールの匂いが浴室に充満して、猫というより自分が癒されてる気がする。水の音、猫の低い唸り声、排水口に流れていく泡の音。この一連の音が妙に心地よくて、週の疲れが抜けていくような感覚がある。
三匹いるとそれぞれ反応が全然違うのが面白い。一匹目の黒猫は諦めたような顔でじっと耐えてる。二匹目の茶トラは最初から最後まで鳴き続ける。うるさい。本当にうるさい。近所迷惑じゃないかと心配になるレベルでにぎやかなんだけど、暴れはしないから助かってる。三匹目の長毛種は、さっき書いた通り意外と平気な顔をしていて、時々目を細めて気持ちよさそうにしてる。こいつだけは本当に風呂が好きなのかもしれない。
洗い終わった後のドライヤータイムがまた大変で。濡れた猫を三匹、順番に乾かしていくんだけど、一匹乾かしてる間に他の二匹が部屋中を走り回って水滴を撒き散らす。リビングのソファも、寝室のベッドも、全部びしょびしょになる。きれいにしようと思って洗ってるのに、結果的に部屋が汚れるっていう本末転倒な状況に毎回陥ってる…だけど。
そういえば、中学生の頃に飼ってた犬も風呂嫌いだったな。あれはシェパードの雑種で、体がでかいから洗うのが本当に大変だった。父親と二人がかりで庭で洗ってたんだけど、途中で逃げ出して泥だらけの花壇に突っ込んでいって、余計に汚れるっていう。あの時の父の呆れた顔を今でも覚えてる。
猫の場合は犬ほど大変じゃないけど、それでも爪を立てられることはある。先週も左腕に三本、引っかき傷ができた。血は出なかったけど、赤い線がくっきり残って、会社で「猫に襲われたの?」って聞かれた。襲われたわけじゃなくて、こっちが一方的に洗ってるだけなんだけどね。被害者面できる立場じゃない。
最近気づいたんだけど、猫を洗うと自分の服も結局びしょ濡れになるから、もう最初から濡れてもいい格好でやるようになった。古いTシャツに短パン、裸足。真冬でも暖房ガンガンにして同じ格好でやってる。効率を考えたらこれが一番いい。タオルも大量に使うから、洗濯物も増える。週末の洗濯機は猫タオル専用になってる。
三匹とも洗い終わって、完全に乾いた後の猫たちはふわふわで、触り心地が最高になる。毛並みがツヤツヤしてて、匂いもいい。この瞬間だけは「洗ってよかった」って心から思える。でもその状態が続くのはせいぜい二日くらいで、三日目にはもう普通の猫に戻ってる。一週間後にはまた洗う。この繰り返し。
別に誰かに褒められるわけでもないし、猫たちが感謝してくれるわけでもない。むしろ恨まれてる可能性の方が高い。それでも毎週洗い続けてるのは、たぶん自分が洗いたいからなんだろうな。きれいにしようっていう大義名分はあるけど、本当のところは、あの一連の作業が妙に好きなんだと思う。
来週も土曜日になったら、また三匹を洗う。たぶんずっとこのまま…。

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