猫に起こされる朝は、いつも唐突すぎる

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まだ目覚ましが鳴る前の時間。布団の中で意識が浮いたり沈んだりしている、あの絶妙な時間帯が好きだった。

窓の外はまだ薄暗くて、部屋の中も青白い光に包まれている。冬の朝は特にこの感じが強くて、布団から出たくない気持ちが加速する。スマホを見ればたぶんまだ6時前。あと30分は眠れる。そう思って目を閉じた瞬間、ベッドの端に何かが飛び乗る気配がした。

うちの猫は朝型というか、正確には「人間が起きる時間を知っている型」で、目覚ましの15分くらい前になると必ずやってくる。最初は足元あたりに静かに座っているだけなんだけど、こっちが無視を決め込むと徐々に距離を詰めてくる。今朝もそのパターンだ。布団の上をゆっくり歩く足音というか、重みの移動を感じながら、私は寝たふりを続けた。

やがて顔のすぐ近くで止まる気配。息遣いが聞こえる距離。目を開けたら負けだと思って、呼吸を整えて眠っているふりを貫く。

でも猫って、こっちが起きてるかどうか完全に見抜いてるんだよね。数秒の沈黙のあと、鼻先で私の頬をツンツンし始めた。冷たい。猫の鼻って本当に冷たくて、冬の朝は特にひんやりしてる。一回、二回、三回。リズミカルに突かれて、さすがに無視できなくなって薄目を開けると、至近距離に猫の顔があった。

可愛い瞳、とよく言うけれど、朝のこの距離で見る猫の目はむしろ圧がすごい。「起きろ」って言ってる。言葉は発してないけど確実にそう言ってる。しかもその目には一切の遠慮がない。こっちは眠いんだけどな、と心の中で抵抗しつつ、結局その視線に負けて体を起こした。

猫は満足そうに「ニャー」と一声鳴いて、さっさとベッドから降りていく。

そういえば去年の夏、友達の家に泊まったときのことを思い出した。そこの家には犬がいて、朝になると尻尾をブンブン振りながら顔を舐めてくるタイプだった。あれはあれで強烈だったけど、猫のこの「無言の圧力」とはまた違う起こし方で、動物によって朝のアプローチが全然違うんだなって妙に感心した記憶がある。犬は「起きて!遊ぼう!」って感じだけど、猫は「起きろ。飯」みたいな。どっちも可愛いけど、猫の方がなんというか、交渉の余地がない感じがする…だけど。

ベッドから出て、キッチンに向かう。猫は既に食器の前で待機していて、こっちを振り返りもしない。ああ、やっぱり餌が目的だったのか、と思いながらカリカリをお皿に注ぐ。カラカラという乾いた音が朝の静けさに響く。猫は一心不乱に食べ始めて、さっきまでの「起こしに来た使命感」みたいなものは完全に消えている。

私はぼんやりとその様子を眺めながら、結局自分はまだ眠いままだということに気づく。猫を起こすために起きたわけじゃなくて、猫に起こされたんだった。本末転倒というか、完全に主導権を握られている。

窓の外が少しずつ明るくなってきて、部屋の中にオレンジ色の光が差し込んでくる。猫は食事を終えて、今度は窓辺に移動して外を眺め始めた。私はまだキッチンに立ったまま、コーヒーを淹れる気力もなく、ただ猫の後ろ姿を見ている。

起こされる側としては不本意だけど、この時間帯の静けさは嫌いじゃない。世界がまだ完全には動き出していない感じ。猫だけが確信を持って行動していて、人間の方はまだ半分夢の中にいる。そんな朝の空気感。

ベッドに戻ろうかと思ったけど、もう戻っても眠れないだろうな。

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