猫に起こされる朝は、いつも予定より30分早い

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ベッドの中でまどろんでいると、顔の上に何かが乗った。

目を開けると、うちの猫のムギが鼻先5センチのところでじっとこっちを見ている。瞳孔が開ききった真ん丸の目。朝の6時半。まだ外は薄暗くて、カーテンの隙間から冷たい空気が流れ込んでくる。布団から出たくない季節になると、この猫は容赦なく起こしに来るんだよね。

前に飼ってた猫は、こんなことしなかった。朝まで一緒に寝てくれる、いい子だったのに。ムギは違う。お腹が空いたら即行動。しかも起こし方が段階的にエスカレートしていくのが厄介で、最初は顔を覗き込むだけなんだけど、無視してると次は前足で頬をペシペシ叩いてくる。それでも起きないと、今度は枕元で鳴き始める。あの独特の「ニャアアアン」って伸ばす声、本当に耳に残る。

で、結局起きるわけだけど。

起き上がると、ムギは満足そうにベッドから飛び降りて、キッチンに向かって歩き出す。尻尾をピンと立てて。ああ、これ完全に餌の催促だ。冷蔵庫を開けると、昨日買ったばかりのウェットフードがある。「キャットリッチ」っていう、やたら高級そうなパッケージのやつ。これ、本当に必要なのかなって思いながらも、あの可愛い瞳で見つめられると買っちゃうんだよね。完全に手のひらで転がされてる。

皿に盛ってやると、ムギはすごい勢いで食べ始める。その横で、私はまだ眠い目をこすりながらコーヒーを淹れる。朝の7時前なんて、本来なら二度寝してる時間なのに。窓の外からは、新聞配達のバイクの音が聞こえてくる。冬の朝特有の、ピリッとした空気の匂い。

そういえば去年の今頃、友達が「猫って自分で餌食べられるんだから、自動給餌器買えばいいじゃん」って言ってたな。確かにそうなんだけど、なんか違う気がする。この、起こされて、仕方なく起きて、餌をあげる一連の流れが、もう習慣になってる。というか、この時間に起こされないと逆に不安になりそう。

ムギが食べ終わると、今度は窓辺に移動して外を眺め始める。

私はソファに座って、温かいコーヒーカップを両手で包む。外はまだ暗いけど、少しずつ明るくなってきてる。こういう時間帯って、妙に静かで落ち着くんだよね。起こされたことへの怒りも、いつの間にか消えてる。ムギは窓の外を見ながら、小さく喉を鳴らしてる。多分、外を通る鳥でも見てるんだろう。

猫に起こされる生活って、最初は正直イライラした。自分のペースで起きたいのに、毎朝強制的に起こされるんだから。でも不思議なもので、慣れてくると悪くないって思えてくる。規則正しい生活になったし、朝の時間を有効に使えるようになった…とか、そういう前向きな理由をつけたくなるけど、実際のところは単純に諦めただけかもしれない。

ムギが窓辺から戻ってきて、私の膝の上に乗ってくる。さっきまでの「起こす係」の顔じゃなくて、甘えん坊の顔。丸まって、目を細めて、満足そうにしてる。

この瞬間のために起こされてるのかもって、ふと思う。朝の静けさの中で、温かいコーヒーと、膝の上の猫。悪くない組み合わせ…だけど。

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