
うちの猫は朝5時に起こしにくる。
正確には5時02分くらいかな。最初は可愛い声で「にゃあ」って鳴くんだけど、私が布団から出ないと分かると、顔の上に乗ってくる。3キロ半の重みが鼻と口を塞ぐ感覚で目が覚めるって、なかなかハードな目覚ましだよね。でも慣れた。人間って何にでも慣れるんだなって思う。
猫と暮らし始めて3年になるけど、生活のリズムが完全に猫中心になってる。特に食事の時間。私のじゃなくて、猫の。カリカリをボウルに入れる音がキッチンに響くと、どこにいても一瞬で飛んでくる。さっきまでソファの背もたれで寝てたのに、あの俊敏さはどこから来るんだろう。
そういえば前に友達が「猫飼ってる人ってみんな猫の話しかしなくなるよね」って言ってたんだけど、それ本当かもしれない。気づいたら写真フォルダが9割猫で埋まってるし…だけど。
食事風景を見てるだけで時間が溶けていく。私が夕飯の支度をしてる横で、猫も自分のご飯を食べてる。カリカリを噛む小さな音。時々、気に入らない粒を器の外に出して、床に転がってるやつを後から食べたりする。その選別基準が全く分からないんだけど、本人(本猫?)は真剣そのもの。
週末の昼下がりとか、私がリビングでサンドイッチ食べてると、必ず膝の上に乗ってくる。自分はもうご飯食べたくせに、私が何か食べてると気になるらしい。レタスの切れ端を鼻先に持っていくと、くんくん嗅いだ後にプイって顔を背ける。その仕草が毎回同じで、見てるこっちまで笑ってしまう。窓から差し込む午後の光が猫の毛を照らして、埃が光の中を漂ってる。そんな瞬間がたまらなく好きだったりする。
ペットショップの店員さんに最初に言われたのは「猫は気まぐれだから、なつかないこともありますよ」だった。その時は「大丈夫です」なんて軽く答えたけど、内心ちょっと不安だったかもしれない。でも実際に一緒に暮らしてみると、気まぐれっていうか、ちゃんと自分の意思があるんだよね。お腹空いた時は甘えてくるし、満足したらさっさとどこかへ行く。その距離感が心地いい。
人間の食事に興味津々なくせに、実際には猫用のおやつしか食べない。「ニャンフェリーチェ」っていうブランドのちゅーるみたいなやつが最近のお気に入りで、パッケージの音がするだけで全速力で寄ってくる。あの執着心、私も何かに対してあれくらい情熱持てたらいいのにな、とか思ったり。
夜の9時過ぎ、私が遅めの夕食を取ってると、キャットタワーの一番上から見下ろしてる。監視されてる気分になるけど、目が合うとゆっくり瞬きする。猫の世界では「愛してる」のサインらしい。知った時はちょっと嬉しかった。だから私も瞬きを返す。傍から見たら変な人だろうけど、まあいいか。
食器を洗ってる時の水音も好きみたいで、キッチンの入口でじっと座ってる。何が面白いのか分からないけど、10分くらいずっとそこにいる。たまに水滴が跳ねて猫の鼻に当たると、ぶるっと首を振る。その顔がまた面白くて、わざと水を跳ねさせたくなる衝動を抑えるのに必死。
猫と私の食事時間は完全にずれてるようで、実は重なってる。朝は猫が先、私が後。夜は同時進行。休日の昼は私が先で、猫は後からやってきて膝の上。このリズムが崩れると、なんだか一日の調子が狂う気がする。
結局のところ、猫と暮らすってこういうことなのかもしれない。特別なイベントがあるわけじゃなくて、ただ毎日の食事とか、昼寝とか、そういう何でもない時間を一緒に過ごすだけ。それだけのことなんだけど。
明日も朝5時に起こされるんだろうな。


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