我が家の週末は、いつも猫たちのお風呂タイムでにぎやかな騒ぎに包まれます。多頭飼いをしている私の家では、月に一度の猫の入浴が家族全員参加の一大イベントとなっているのです。猫は水が苦手だとよく言われますが、定期的なお風呂は被毛の健康を保ち、アレルゲンを減らすためにも大切なケアです。特に長毛種や外に出る機会のある猫たちには、きれいにしようという飼い主の愛情が欠かせません。
朝から浴室の準備を始めます。滑り止めマットを敷き、ぬるま湯を用意し、猫用シャンプーとタオルを何枚も積み上げます。我が家には三匹の猫がいて、それぞれ性格が全く違います。一番年上の茶トラのマロンは比較的お風呂に慣れていて、諦めたような表情で身を任せてくれます。二番目の白黒のオセロは好奇心旺盛で、水に興味津々ながらも実際に濡れると大騒ぎするタイプ。そして末っ子の灰色のグレイは、お風呂という言葉を聞いただけで家中を逃げ回る警戒心の強い子です。
入浴の順番はいつもマロンから始めます。ベテランの彼から始めることで、私自身も心の準備ができるのです。マロンを抱きかかえて浴室に入ると、彼は観念したように小さく鳴きます。まずはブラッシングで抜け毛を取り除き、それからゆっくりとぬるま湯で体を濡らしていきます。猫の入浴で最も大切なのは、水温と優しさです。人間が少しぬるいと感じる程度の温度が猫には最適で、急に水をかけたり強くこすったりしないことが信頼関係を保つ秘訣です。
シャンプーを手のひらで泡立ててから、マロンの背中、お腹、足と順番に洗っていきます。指の腹を使って優しくマッサージするように洗うと、マロンは目を細めて気持ちよさそうな表情を見せます。顔周りは特に慎重に、濡れたタオルで拭く程度にとどめます。猫の耳や目に水が入ると中耳炎や結膜炎の原因になることもあるため、この部分は細心の注意が必要です。すすぎも丁寧に行い、シャンプーが残らないようにします。残留したシャンプーは皮膚トラブルの原因になるからです。
マロンの入浴が終わると、次はオセロの番です。オセロを捕まえるのは一苦労で、家族総出の作戦会議が必要になります。リビングのソファの下に隠れたオセロを、おやつで誘い出そうとする娘、反対側から回り込もうとする夫、そして私は正面から声をかけて安心させる役割です。このにぎやかな追いかけっこが、我が家の猫の入浴イベントの醍醐味でもあります。ようやく捕獲に成功すると、オセロは「裏切られた!」とでも言いたげな表情で私を見つめます。
浴室に入ったオセロは、最初は大人しいのですが、水に触れた途端に豹変します。必死に浴槽から脱出しようと暴れ、私の腕には無数の引っかき傷ができます。それでも心を鬼にして、きれいにしようという使命感で洗い続けます。オセロの白い部分は特に汚れが目立つため、丁寧に洗う必要があります。不思議なことに、洗い終わってタオルドライをしている頃には、オセロも落ち着きを取り戻し、ゴロゴロと喉を鳴らし始めるのです。きれいになった自分の体が気持ちいいのか、それとも終わった安堵感なのか、その表情はどこか満足げに見えます。
最後のグレイは、もはや捕獲作戦というより救出作戦です。天井近くのキャットタワーの最上段に逃げ込んだグレイを、脚立を使って降ろすところから始まります。抱き上げた時の彼の震えと、必死にしがみつく爪の感触に、いつも申し訳ない気持ちになります。しかし、外を自由に歩き回るグレイにこそ、定期的な入浴が必要なのです。浴室では最大限の優しさで接し、できるだけ短時間で済ませるよう心がけます。グレイの場合は、洗うというより「お湯で流す」という表現の方が適切かもしれません。それでも、きれいになった被毛は驚くほど柔らかく、ふわふわとした手触りになります。
三匹の入浴が終わる頃には、浴室は水浸し、私の服もびしょ濡れ、そして家中が猫の鳴き声の余韻で満たされています。しかし、ドライヤーで乾かされた猫たちは、まるで別の生き物のように美しく輝いています。被毛がふんわりとして、触り心地も格段に良くなり、何より清潔な香りが部屋中に広がります。猫の入浴後は、彼らも疲れているのか、珍しく三匹が並んで日向ぼっこをする姿が見られます。その平和な光景を見ると、にぎやかな入浴大作戦の苦労も報われる思いがします。
猫をきれいにしようという行為は、単なる衛生管理以上の意味を持っています。それは飼い主と猫との信頼関係を深める時間であり、猫の健康状態をチェックする機会でもあります。入浴中に皮膚の異常や寄生虫、怪我などを早期に発見できることも多いのです。また、定期的な入浴に慣れた猫は、万が一病気になった時の投薬や治療もスムーズに受け入れてくれる傾向があります。我が家のにぎやかな入浴タイムは、猫たちの健康と幸せを守るための、愛情あふれる時間なのです。
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