猫が窓の外をじっと見てる日は、私も何もしたくなくなる

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雨の日の午後って、なんであんなに時間が止まったみたいに感じるんだろう。

うちの猫が窓際に座って、じっと外を見つめてる。私もその隣に座って、同じ景色を見てる。ガラス越しに見える灰色の空と、アスファルトを叩く雨粒。猫の耳がときどきピクッと動くのは、雨音の中に何か聞こえてるのかもしれない。私には何も聞こえないけど。

窓ガラスが少しだけ冷たくて、額を押し付けるとひんやりする。猫の方は平気そうな顔で座ってるから、きっと体温が高いんだろうな。羨ましい。

この猫を拾ったのは三年前の夏だった。近所のコンビニの裏で鳴いてて、放っておけなくて連れて帰った。最初の一週間は押し入れから出てこなくて、ちゃんと懐いてくれるか不安だったのを覚えてる。今じゃこうして、雨の日になると勝手に窓際に陣取って、私が隣に座るのを待ってる感じになった。待ってるのか知らないけど、座ると嫌がらないから、まあいいかなと思ってる。

外では誰かが傘をさして急ぎ足で歩いてる。駅に向かってるのかな。私は今日、どこにも行く予定がない。洗濯物は部屋干しになってるし、買い物も昨日済ませた。だから一日中、こうしてぼんやりしててもいい日。

そういえば前に、雨の日専用の紅茶があるって聞いたことがある。「レインドロップ・ブレンド」とかいう名前で、湿度の高い日に飲むと香りが引き立つらしい。本当かどうか知らないけど、そういうの信じたくなる気分のときってあるよね。

猫の尻尾がゆっくり左右に揺れてる。何か考えてるのか、それとも何も考えてないのか。多分後者だと思う。人間だけだよね、こんなに無駄なこと考えるの。明日の天気とか、来週の予定とか、去年言われた嫌なこととか。猫はきっと、今この瞬間の雨音と、窓の向こうの動く影だけを見てる。

私も真似してみる。何も考えないで、ただ雨を見る。

三分くらいしか続かなかった。頭の中で晩ごはん何にしようとか、あのメールまだ返信してないとか、勝手に浮かんでくる。人間やめたい。

でも猫の横にいると、そういう焦りみたいなものが少しだけ薄れる気がする。別に猫が何かしてくれるわけじゃない。ただそこにいて、同じ方向を見てるだけ。それだけで十分というか、それ以上何かある必要もないというか。

窓ガラスに雨粒が斜めに走って、小さな水の道ができてる。一粒が別の一粒と合流して、少し大きくなって流れ落ちる。猫の目はそれを追ってるのかもしれない。私もなんとなく追ってみる。

こういう時間が好きだって気づいたのは、大人になってからだった。子供の頃は雨が嫌いで、外で遊べないのが不満だった。今は逆に、雨だから何もしなくていい理由ができて、ちょっと安心する。歳を取ったってことなのかな。

猫があくびをした。大きく口を開けて、小さな牙が見える。それから前足で顔を拭って、また窓の外を見る。飽きないのかな、同じ景色ずっと見てて。

私はスマホを取り出しそうになって、やめた。今日くらい、こうしてていいよね。

雨はまだ降り続いてる。

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