本を読んでいると必ず猫が邪魔をしにくる、という日常

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ページをめくろうとした瞬間、視界の端で何かが動いた。

もう何度目かわからないけれど、私が本を開くと必ずうちの猫がやってくる。別に呼んでないし、むしろ静かに読書したいのに、本の上にどっかりと座り込んで、こっちをじっと見つめてくる。最初は偶然かと思っていた。でも違う。あれは確信犯だ。私が本を手に取ると、どこにいたのか知らないけれど数分以内に現れて、ページの真ん中あたりに前足を置いてくる。そのときの顔がまた、何とも言えない「どうしたの?」みたいな無垢な表情をしているから始末が悪い。

読書好きの友人に愚痴ったら「それ、あるある」って言われたんだけど、本当にこれって猫飼いあるあるなんだろうか。

うちの猫は特に文庫本が好きらしい。ハードカバーだとあまり来ないのに、文庫本を開いた途端に膝の上に飛び乗ってくる。何かの実験で、猫は紙の匂いに反応するって聞いたことがあるような、ないような。それとも単純に、私の注意が自分以外に向いているのが気に入らないだけなのか。いずれにしても、読んでいる途中で猫の肉球が文字の上に乗ってくると、集中なんてできるわけがない。しかもその肉球、妙に温かくて柔らかくて、ついつい触ってしまう。そうすると猫の思うつぼで、喉をゴロゴロ鳴らしながら本の上で丸くなり始める。

先週の金曜日の夜、ようやく買ったばかりのミステリー小説を読もうとソファに座った。部屋の照明を少し落として、温かいお茶を淹れて、さあこれから犯人が明かされるというクライマックスのシーン。そこに颯爽と登場したのが、我が家の三毛猫である。本のちょうど真ん中あたりに尻尾をぱたぱたさせながら陣取って、私の顔を覗き込んでくる。「今じゃないんだけど」と言っても通じるはずもなく、むしろ「今だからこそ」と言わんばかりに、さらに体重をかけてくる。

そういえば昔、喫茶店で読書するのにハマっていた時期があった。

家だと邪魔が入るからって理由で、わざわざ外に出て本を読んでいたんだけど、今思えばあれも猫のせいだったのかもしれない。当時は一人暮らしで猫なんて飼ってなかったけど、実家の猫がそういうタイプだったから、無意識に「本を読む=邪魔される」という図式が刷り込まれていたのかも。喫茶店の名前は確か「カフェ・ルミエール」とかいう、ちょっとおしゃれぶった店だった。コーヒーは普通だったけど、窓際の席が落ち着いて好きだった。

猫が本を邪魔する理由について、ネットで調べたこともある。「飼い主の注意を引きたい」「紙の感触が好き」「温かい場所を探している」とか、いろんな説が出てくるけれど、結局のところ正解なんてないんだろう。うちの猫の場合、どうやら私が何かに集中している姿そのものが気に入らないらしい。スマホをいじっているときは来ないのに、本を読んでいるときだけ来る。これはもう、本に対する嫉妬としか思えない。ページをめくる音が気になるのか、それとも本を持つ私の手の位置が撫でてほしいポジションなのか。試しに電子書籍リーダーで読んでみたこともあったけど、やっぱり来た。つまり紙かどうかは関係ない。

一度だけ、猫を無視して読み続けようとしたことがある。

心を鬼にして、膝の上に乗ってきた猫を横にずらして、必死にページを追いかけた。そうしたら猫は諦めるどころか、今度は本の上に顎を乗せてきた。しかも、ちょうど読んでいる行の真上に。もう笑うしかなかった。完全に負けを認めて、本を閉じて猫を撫でた。そうしたら満足そうに目を細めて、五分後には私の膝の上で爆睡していた。結局、読書は中断。犯人が誰だったのかを知ったのは、それから三日後のことだった。

最近は諦めの境地に達しつつある。猫が来たら来たで、それも読書時間の一部だと思うことにした。ページの上に肉球が乗ってきたら、そこで一旦休憩。お茶を飲み直したり、窓の外を眺めたり。猫が満足して離れていくまで待つ。そうすると不思議なもので、読書のペースは落ちるけれど、妙に記憶に残るようになった気がする。中断されるたびに、さっきまで読んでいた内容を反芻するから、かえって頭に入るのかもしれない。

本当は、誰にも邪魔されずに一気に読み切りたい本もある。だけど、猫のいる生活ってそういうものなんだろう。完璧な読書環境なんて、最初から存在しないのかもしれない…だけど。

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