本を読んでいると必ず猫が邪魔をしてくる件について

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ページをめくろうとした瞬間、視界の端で何かが動いた。

案の定だ。ソファの肘掛けから、うちの三毛猫のマロが私の膝に向かって跳躍態勢に入っている。この子、私が本を開くと必ず現れる。まるで本という物体が、自分への注意を奪う敵だと認識しているみたいで、読書を始めて五分も経たないうちに、どこからともなくやってきては邪魔をする。しかも毎回、本のど真ん中に陣取るんだよね。

今日読んでいたのは、先週ようやく手に入れた推理小説。犯人が誰なのか、ちょうどいいところまで来ていたのに。ページの上に、肉球がぽすんと乗った。見上げると、マロがこちらをじっと見つめている。その目は「私を見て」と言っている。いや、言ってる気がする、というより確実に言ってる。

本を少し傾けてみる。すると猫も体を傾けて、再び視界の中心に入ってくる。まるでカメラ目線を外さない芸能人みたいな執念深さだ。

仕方なく片手で撫でながら読もうとするんだけど、それでは満足しないらしい。今度は喉をゴロゴロ鳴らしながら、本と私の顔の間に頭を突っ込んでくる。完全に読めない。文字が猫の毛で覆われる。茶色と白と黒の模様が、活字の代わりに私の視界を占領した。ちなみにマロという名前は、栗みたいな丸顔だからつけたんだけど、こういう時は「魔王」の方が似合う気がする…。

前に飼っていた犬は、私が本を読んでいても気にせず寝ていたんだよね。むしろ静かにしていてほしい時ほど静かにしてくれる、空気の読める子だった。それに比べてこの猫は、空気を読むどころか、空気を支配しようとしてくる。「今は私の時間」と宣言するように、本の上で寝そべり始めることすらある。

ある時、本当に集中したくて、マロを別の部屋に閉じ込めたことがある。

三十分くらいは静かだった。これはいけるかもと思って、物語に没頭していたら、突然ドアの向こうから「ニャーーーーオ!」という、魂の叫びのような鳴き声が響いた。しかも一回じゃない。五秒おきくらいに鳴く。近所迷惑を心配して、結局ドアを開けたら、マロは何事もなかったかのように部屋に入ってきて、また私の膝に乗った。そして本の上に座った。完全勝利である。

猫を飼っている友人に相談したら、「それ、愛情表現だよ」と言われた。本を読んでいる時の私の膝が、ちょうど良い温度と柔らかさなんだとか。それに、飼い主が何かに集中している姿を見ると、猫は「自分が相手にされていない」と感じて、わざと邪魔をするらしい。つまり、かまってちゃんなのだ。

でも正直、嫌いじゃない。むしろ、この邪魔が日常になってしまった。

最近は本を読む時、最初から膝の上にタオルを敷いて、猫が来ることを前提にしている。マロが膝に乗ってきたら、片手で撫でながら、もう片方の手で本を持つ。読むスピードは確実に落ちるけれど、猫の温もりを感じながら読む小説は、不思議と記憶に残る。たぶん、物語と一緒にマロの重みや、喉を鳴らす振動も記憶されるからだと思う。

夏の午後、窓から差し込む光が本のページを照らしている時、マロは決まって私の太ももの上で丸くなる。エアコンの効いた部屋で、猫の体温が少し暑苦しいと感じる瞬間もあるけれど、それでも追い払う気にはなれない。ページをめくる音と、規則正しい寝息が混ざり合う。

そういえば、最近読んだ本の内容、あまり覚えていない。でも、その時マロがどんな格好で寝ていたかは、妙に鮮明に思い出せる。本末転倒かもしれないけど。

結局、私は読書家としては失格なのかもしれない。猫に邪魔されても怒れないし、むしろ邪魔されることを待っている節すらある。本を開くと、数分後には温かい重みが膝に乗ってくる。その繰り返し。

これからも、きっと変わらないんだろうな。

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