私の読書時間は、いつも甘く切ない駆け引きの連続です。特に休日の午後、お気に入りの一冊を手に取るとき、必ずと言っていいほど始まる猫との攻防戦。それは、まるで恋人との駆け引きのように、時に甘く、時にもどかしい時間なのです。
今日も私は、新しく買ったミステリー小説を読もうと、お気に入りのソファに腰を下ろしました。温かい日差しが窓から差し込み、完璧な読書タイムの始まりかと思いきや、すぐそばでソワソワと動き始める影。そう、我が家の主役である三毛猫のモモです。
最初は何事もないかのように、さも偶然を装って私の膝の近くにやってきます。その仕草たるや、まるで「あら、たまたまここにいたのね」と言わんばかり。でも私は知っています。これが邪魔作戦の第一段階だということを。
案の定、モモは徐々にその存在感を主張し始めます。まずは小さな「にゃー」という声。無視をすると、今度は私の足元でゴロゴロと喉を鳴らし始めます。その音が心地よすぎて、つい本から目を離してしまいそうになります。でも、今日こそは負けないと心に決めていました。
しかし、モモの作戦はそれだけではありません。次は決定打とも言える「本に頭突き」作戦です。私が持っている本めがけて、ふわっと柔らかい頭を押し付けてきます。その瞬間、本のページが閉じてしまい、どこを読んでいたのか分からなくなってしまいました。
「もう、モモったら！」と言いながらも、その仕草があまりにも愛らしくて、怒る気持ちもどこかへ消えていきます。むしろ、この邪魔な行動こそが、モモならではの愛情表現なのだと気付かされます。
読書に集中したい気持ちと、構ってほしがる猫への愛おしさの間で揺れる心。それは、まるで甘いお菓子を我慢しようとする時のような、切ない葛藤です。モモは私の気持ちなど知る由もなく、さらなる作戦を繰り出してきます。
今度は本の上に直接乗っかってきました。しかも、お気に入りの姿勢でお腹を見せながら。これぞモモの必殺技です。真っ白なお腹を見せられては、もう抵抗する術がありません。思わず手を伸ばしてモフモフし始めると、満足げな表情を浮かべるモモ。
この時間が実は密かな楽しみになっていることに、最近気付き始めています。読書の邪魔をされることが、むしろ特別な思い出として心に刻まれていくのです。モモとの何気ない駆け引きが、日常の中での癒しとなっているのです。
本を読もうとするたびに繰り広げられる、この甘い攻防戦。時には「もう、しょうがないなぁ」とため息をつきながらも、モモの存在が私の生活にどれだけ彩りを添えているか、つくづく実感させられます。
読書中の邪魔は、実は愛情表現の一つなのかもしれません。猫は飼い主が何かに夢中になっているとき、その注目を自分に向けようとする習性があるそうです。それは、私のことを大切に思ってくれているからこその行動なのでしょう。
時には本を諦めて、モモとじっくり遊ぶ時間を作ることもあります。そんな時のモモの嬉しそうな表情を見ていると、読書よりも大切なものに気付かされます。それは、かけがえのない家族との時間です。
モモが我が家にやってきてから、読書の形態も少し変化しました。今では、モモが昼寝をする時間帯を狙って本を読んだり、片手でモモを撫でながら本を読んだりと、モモとの共存方法を模索するようになりました。
そして、最近では新しい発見がありました。モモの隣で本を読むと、不思議と集中力が増すのです。規則正しい寝息や、温かい体温が、心地よい読書空間を作り出してくれます。邪魔をされることを予期しながらも、その瞬間を待ち望むような、不思議な感覚さえ芽生えてきました。
読書する私とモモ、この関係は今では完璧な調和を生み出しています。時には邪魔され、時には癒され、そんな何気ない日常の中で、私たちは互いの存在を確かめ合っているのかもしれません。
本を読もうとする度に始まるこの甘い攻防戦は、きっとこれからも続いていくでしょう。それは、私とモモだけの特別な時間。邪魔をされることが、むしろ幸せな日常の証となっているのです。
読書の邪魔をする猫は、実は最高の読書仲間なのかもしれません。彼らは、私たちに本当に大切なものを教えてくれる存在なのです。それは、愛おしさと共に過ごす時間の尊さ。そして、その時間がどれほど私たちの心を豊かにしてくれているのかということ。
今日も私は本を手に取り、モモの邪魔が始まるのを、少し期待しながら待っています。この甘い攻防戦が、私たちの大切な日課となっているのですから。
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