朝5時の猫劇場、私はただ呆然とソファに座っている

Uncategorized

ALT

また始まった。時計の針が午前5時を指したあたりで、うちの猫が謎のスイッチを入れる。

リビングから寝室、寝室からキッチン、キッチンから廊下。全速力で駆け抜けていく三毛猫の「むぎ」を、私は布団から這い出た状態のまま、ぼんやりと眺めている。走る理由? 知らない。本人(本猫?)に聞いても答えてくれないし、そもそも止まってくれない。カーテンをよじ登り、冷蔵庫の上に飛び乗り、観葉植物の鉢を倒しかける。私の制止の声なんて、もはや BGM 扱いだ。

むぎを引き取ったのは去年の秋口。ペットショップじゃなくて、知人が保護した子猫を譲り受けた形だった。「大人しい子ですよ」って言われたんだけど、あれは完全に詐欺だったと思う。最初の一週間こそ隅っこで丸まっていたものの、環境に慣れた途端に本性を現した。深夜2時に突然鳴き出す、ティッシュ箱を破壊する、私の仕事用ノートパソコンのキーボードの上で寝る。まあ可愛いから許してるけど、正直しんどい時もある。

そういえば前に飼ってた金魚のことを思い出した。小学生の頃、夏祭りですくってきた「きんちゃん」っていう和金。あれは本当に静かだった。水槽の中をゆらゆら泳いでるだけで、私に何かを要求してくることもなかった。餌をあげて、水を替えて、それで関係が成立してた。今思えば、あれはあれで寂しかったのかもしれないけど…平和ではあったよね。

話を戻す。むぎの運動会は、たいてい30分くらいで終わる。エネルギーを使い果たしたのか、ふっと動きが止まって、何事もなかったかのように毛づくろいを始める。その姿を見ていると、さっきまでの狂乱が嘘みたいに思えてくる。私はといえば、すでに目が冴えてしまって二度寝もできない状態。仕方なくコーヒーを淹れて、ソファに座ってぼんやりする。むぎは私の膝の上に乗ってきて、ゴロゴロと喉を鳴らし始める。「お前、さっきまであんなに暴れてたのに」って心の中でツッコむけど、この温かさと柔らかさに負けて、結局何も言えなくなる。

窓の外が少しずつ明るくなってくる。冬のこの時期、朝焼けが綺麗に見える日がある。オレンジとピンクが混ざったような、微妙な色合いの空。むぎの毛並みを撫でながら、そんな景色をぼんやり眺めていると、妙に落ち着いた気持ちになる。別に何か特別なことが起きるわけじゃない。ただ時間が過ぎていくだけ。

猫を飼うって、こういうことなんだろうなと思う。

自分の時間が削られる。睡眠も、静寂も、部屋の整頓状態も、全部少しずつ奪われていく。それでも文句を言いながら世話を続けて、呆れながらも見守って、結局のところ「まあいいか」って思ってしまう。友達に愚痴ると「それ完全に猫に支配されてるじゃん」って笑われるんだけど、否定できない自分がいる。

むぎが私の膝の上で寝息を立て始めた。重い。足が痺れてきたけど、動かすと起きちゃうから我慢する。スマホを取ろうと手を伸ばしたら、むぎがピクッと反応して、また走り出すんじゃないかとヒヤッとする。幸い、そのまま眠り続けてくれた。

こんな朝が、たぶんこれからもずっと続く。私は呆然としながら、それを受け入れている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました